飲酒科学振興協会が第2回シンポジウム開催。「健康寿命」と並ぶ重要な概念として「飲酒寿命」への研究に着手

第2回一般社団法人飲酒科学振興協会シンポジウム お知らせ

2024年3月1日、一般社団法人飲酒科学振興協会「やさしい酔い研究会」により、第2回シンポジウム(会場:レンブラントホテル大分)が開催されました。参加者は大学関係者、県や市の職員、三和酒類株式会社の関係者、メディアなどから約50人。「今日とこれからのお酒と酔いの有用性を考える」というテーマのもと、協会の代表理事・松浦恵子氏(大分大学医学部教授)、副理事長・馬奈木俊介氏(九州大学大学院工学研究院教授)、副理事長・吉本尚氏(筑波大学医学医療系准教授)、理事・渡邊博子氏(大分大学経済学部教授)が講演。また、老田昭伍氏(合同会社ダイバラボ代表)がアルコール体質検査事業に関する最新報告をしました。

松浦氏は、アルコール体質分類⋆した被検者を対象に、大分大学医学部の施設内で実施したチェイサーの効果検証など飲酒に関する臨床研究結果を報告。馬奈木氏は、「飲酒寿命」に関する科学的研究の重要性を論じ、アルコール体質別に疾病リスクを考慮した、適切な飲み方がもたらす幸福レベルの計測もふまえ、「飲酒寿命」を算出することの社会的な意義について言及しました。吉本氏はアルコール体質検査の要点と適正飲酒=やさしい酔いをもたらす研究の可能性、作成に関わられた厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年2月19日公表)公開の意義について報告。渡邊氏は担当ゼミの学生たちが飲食店の女将や大分県内の日本酒蔵元とのディスカッションなど、お酒との向き合い方を考察する様子を報告しました。また、ショートトークでは老田氏が、アルコール体質検査及び適正飲酒をビジネスに発展させる手法について論じました。

今回、馬奈木氏が言及した「飲酒寿命」という概念の重要性が、講演後のワークショップなどでも注目されました。エビデンス(科学的根拠)に基づく「飲酒寿命」を算出する試みの社会的な意義について、出席者の間で賛同を得て、再確認されました。健康寿命 (healthy life expectancy)とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間を意味します。ただ長生きするというのでなく、生活の質を考慮すべきという認識の高まりから、健康寿命に注目が集まっています。馬奈木氏が考案した「飲酒寿命 (drinking life expectancy)」は健康寿命に大きな影響を与えうるものです。我々は、これからアルコール分解能力別の飲酒による幸福レベルの算出 (welldrinking)や、疾病リスクを考慮した「飲酒寿命」の算出を行います。この「やさしい酔い (hospitality with drink): 齢-良-酔」へ一般社団法人飲酒科学振興協会として取り組むことで、お酒の適切な飲み方を研究していきます。

⋆ アルコール体質分類: 体内のアルコール代謝酵素(ADH1B、ALDH2)の活性度合いによりアルコール体質を分類する。唾液を検体とした遺伝子検査により行える。

【開催概要】
名称:第2回 一般社団法人飲酒科学振興協会「やさしい酔い研究会」シンポジウム
テーマ:今日とこれからのお酒と酔いの有用性を考える
日時:2024年3月1日(金)13:00~17:00
場所:レンブラントホテル大分 久住の間

【講演】
・「飲酒関連の臨床研究~疑問を本気で科学する~」
松浦恵子 大分大学医学部 教授/学長特命補佐(ダイバーシティ担当)
・「社会課題の数値化:飲酒寿命へ」
馬奈木俊介 九州大学大学院工学研究院 教授/総長補佐(SDGs 担当)、都市研究センター長
・「アルコール体質を知ることは、やさしい酔いにつながるか?」
吉本尚 筑波大学医学医療系 准教授/健幸ライフスタイル開発研究センター長
・「若者たちによるお酒との向き合い方~大分大学経済学部授業での取り組みから~」
渡邊博子 大分大学経済学部社会イノベーション学科 教授

【ショートトーク】
「適正飲酒をビジネスへ Nomityの挑戦」
老田昭伍 合同会社ダイバラボ代表

【パネルディスカッション】
司会:一般社団法人飲酒科学振興協会 代表理事・松浦恵子
パネリスト:副理事長・馬奈木俊介、副理事長・吉本尚、理事・渡邊博子

【飲みニケーションワークショップ】
テーマ:嗜好品にエビデンスは必要か?

●一般社団法人飲酒科学振興協会について
一般社団法人飲酒科学振興協会は2022年7月21日、大学の研究者と三和酒類株式会社が共同で設立した研究機関です。活動目的は、ダイバーシティ(多様性)を尊重する新時代に、適正飲酒、すなわちお酒の適切な飲み方、「やさしい酔い」というお酒の楽しみに方について多面的科学的にアプローチし、社会実装していくことです。同年12月22日に「ダイバーシティ(多様性)に調和する、新時代の飲酒のあり方を考える」をテーマに発足記念シンポジウム(場所:レンブラントホテル大分)を開催しました。

写真撮影:三井公一

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